拾い恋(もの)は、偶然か?
「正直、君を甘く見ていたんだと思う。下手な細工が通用する子だと思ってたんだ。」
「それは、褒められているんでしょうか?」
なんとなく遠まわしにディスられている気がするんだけど。首をひねれば、部長が噴き出した。
「ふっ、そうかもしれないね。」
「……。」
マジで、なんだこいつ。意外と部長って腹黒系だったとか?そーかそーか。ちょっとイケメンだからって、私がちょっとの嘘でどうかなるとか思ってたんだ?なんだよほんと。真面目に考えたこの数日間を返せってんだ。
おかげではっきりと目が覚めたよ。やっぱりこの人が私なんかを好きになるはずがなかったってこと。
「一昨日会った飲み屋ね。正直あそこによく行くっていうのは嘘だよ。」
「は?」
ひじ掛けに手をついて頬杖をついている部長の告白は、あまりにもしょうもなくて、言葉を理解するのに少し時間がかかった。
「君たちが飲みに行くって言ってるのを聞いてね。偶然を装って突入したんだ。初めて入ったよ。ああいう店。」
「……。」
聞いてたと言った部長。だけどあの日のことを思い出してみても、私と先輩の話が聞こえるような場所に部長はいなかったと思う。私も部長を"見てた"んだから、そこは確実だ。
「ああ、目でも聞けるだろ?会話くらい。」
「……人の唇を読むのはプライバシーの侵害だと思います。」
睨みつけてみても部長は涼し気な表情。まるで反省していない様子。