拾い恋(もの)は、偶然か?
「俺なんて、そんなものだ。本当に好きな女を口説く術も分からない、ただのつまらない男だ。」
哀愁を漂わせて、色気全開で言われても待ったく説得力がないけど。私のために、そんなに一所懸命になってくれていたことがとても嬉しかった。
それでも私はこの喜びを顔に出せない。なぜなら私は、部長以上に頑固者だ。
「部長は、私をどうしたいんですか。」
はっきり迷惑ですとも言えず、部長から顔を逸らすことしかできない馬鹿な私。そのまま愛想を尽かしてくれればいいのに。
「言っただろ?君が好きだって。」
「っっ、」
部長の温かくて大きな手が、私の手を包む。咄嗟に振り返れば、部長はまっすぐに私を見つめていて、その綺麗な瞳に吸い込まれてしまいそうになる。
「俺はああいう居酒屋にはいかない。」
部長の指先が私の頬を滑って、乱れていた髪が耳にかけられた。触れた部分が熱い。そして私をまっすぐに見つめる部長の目も、熱い。
「さっきのコーヒーショップは気に入っていてね。よく飲みに行くよ。」
うちの会社の御曹司なくせに、意外と庶民的なところにも行くなんて、ポイントが高い。