拾い恋(もの)は、偶然か?
「趣味は映画館で映画を見ることだな。もちろん、家でも観る。」
良かった、趣味はクラシックコンサートに行くこととか言われたらどうしようかと思った。
「スマホゲームもする。姪っ子にアイテムを頼まれててね。」
それは、知ってる。
「それから俺は、まずはお友達から、なんて中途半端な付き合いを君とする気はないよ。」
真剣な表情。それなのにまっすぐに私を見るその目はとても、甘い。
結局こういうのって、先に好きになった方が負けなんだと思う。部長がいつからそうなのか分からないけど、好きになったのは絶対、私が先だから。
「どうかな。真剣に考えてくれないか。」
この人はほんとにパーフェクトな人で、黙っていても彼女くらいほいほいつくれると思う。ましてや私クラスなんかじゃなく、芸能人ばりの、同じくパーフェクトな女性が。
それなのにこの人は、私を好きだと言う。
「でも部長、今秘書課に彼女がいるって。」
「え!」
そして私の些細な一言に、こんなに動揺してくれる。
「違うっ、それはこの間まで付き合ってはいたんだ。いやっ、そうじゃなくて、彼女は、そう、今は付き合っていないから!」
「でも、付き合ってたんですよね?」
分かりやすく焦りまくっている部長は、眉根を下げて困っていて。気まずそうに頷いて、間を取るようにコーヒーを飲んだ。