拾い恋(もの)は、偶然か?




「ねぇ、聞いてる?」

「あ、はい。」



ハッと気が付けば、鳴海先輩(なるみ)が訝し気にこちらを見ている。そして私が見ていた方を追うように見て、その顔は意地悪な笑みで歪んだ。


ギクリと、心臓が鈍く高鳴る。


「あからさまに見てると好きなことがバレちゃうよー?」

「……。」


もうバレてます。しかもそのせいなのか告白された上、断ったらキスされました。なんて言ったら先輩はどんなリアクションを取るだろうか?


いじり好きなこの人のことだ。半休取って家で寝て来いというかもしれない。


本当に、自分でも思う。訳の分からない、夢みたいな展開に頭が痛い。


……本当に半休取ろうかな。



「でも意外。古蝶がまさかあんな王道好きとはねー。」

「からかわないでください。」



この間、その話をしたばかり。お決まりの給湯室でのコーヒーブレイク中、付き合ってる人がいるかどうかの話になった。


鳴海先輩には、もうすぐ結婚間近の彼氏がいる。どうやら彼氏自慢をするタイプじゃないらしく、ほぼ一方的に私が尋問を受けただけだった。


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