拾い恋(もの)は、偶然か?




かっこいい。親子丼食べてもかっこいいってどういうことなんだろう。この人が自分の彼氏になる日が来るなんて、ほんとに人生全ての運を使い果たした気分。


「……古蝶。」

「ふわい?」



鳴海先輩の呆れたような声に振り返れば、しかめっ面の先輩がこちらを見ている。


「なんですか?」

「……あんたねぇ。」



額に手を添えて、やれやれとばかりに首を横に振る先輩は、ズイと、私を指さした。


「見すぎ。」

「へ?」


先輩の指先は、私から部長へと移行して……。


「部長のこと。ものすごい見てたよ。」


もれなく、自分の無意識の行動に気付かせてくれた。


おそるおそる周りを見れば、無遠慮に私を見つめている周りの社員たち。部長に目を戻せば、とっても近くにそのご尊顔があった。


「音は俺の顔が好きみたいだね。」


にっこりと笑う部長の発言に、私は笑うしかなく。



まったく意味がないと分かっていても、さりげなく体を戻すしかなかった。なんとか目の前の定食の残りのご飯を口に入れて、味も分からないくせに、噛んでみる。


「今日は美味しいですね、日替わり。」


なんて言って、誤魔化してみても、後の祭りで。


「へぇ。なら明日は日替わりにしようかな。」


相変わらず我が道を行く部長の声を聞いて、恥ずかしさに目を強くつむった。



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