拾い恋(もの)は、偶然か?
「ご馳走様。じゃあもう行くよ。」
そう言って素早く席を立った部長は、私の肩にポンと手を置く。
途端に周辺がざわりと一際沸いたけど、私にとってそんなことはどうでもよく。ただただ、肩に手を置きながら、部長の指先が撫でたその感触のことだけを考えていた。
それはなんだかとても親しい人に宛てられたメッセージのようで。それをされたのが自分だという事実に、私は部長の彼女なのだと実感が湧いてくる。
茫然と、小さくなっていく部長の背中を見つめていたら、それに気付いたのか部長が振り向いた。
胸が、大きく高鳴る。
優しく微笑んだ部長が軽く手を挙げて、それに応えた私の指先は、彼への強すぎる恋心を抑えようと胸元へと移行する。
嗚呼、好き。部長がハイスペックだとか、イケメンだとか、もちろんそんな理由もあるけれど。私は司馬部長だから恋に落ちたのだと、断言できた。
私はまだ、あの人の人となりを全て知らない。だけどそれも、これから深く付き合い、知っていけばいいことだ。
相応しくないとか、元カノへの劣等感とか、割り切れないことは多い。だけどこの気持ちだけは、誰にも負けないと言いきれた。