拾い恋(もの)は、偶然か?
「ほんとに、好きなんだねー。」
「そりゃそうですよ。」
「ほー。」
背後から聞こえてきた撫でるような声に素直に答えた私は、固まったまま考えて考えて、漸く現実を把握できた。
ギギギ……と音がなるように恐る恐る振り返れば、にっこり笑顔の鳴海先輩が。
「どういうことかな?」
「あ、ははは。」
そのあと、告白の日から公園まで、その一部始終を語らせられたのは言うまでもない。
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「それにしてもさー。」
「え?」
食堂から部署に戻る道中、隣を歩く鳴海先輩は浮かない表情。
「大丈夫?」
その言葉に、思わず立ち止まる。それはきっと、鳴海先輩の言いたいことが分かってしまったからだろう。
「はい、多分。」
虐めとか、やっかみとか、嫌がらせとか、これまでの部長の元カノたちがされてきた仕打ちを噂で知っている。歴代のあのお美しい方々でもそうなったのだから、凡人の私はなおさら酷い目に遭うに違いない。
だけど。
「好きなので、いいです。」
「……古蝶。」
あの人が好きなら、なんでも我慢できるなんて、ちょっと乙女チックなことを言ってみたり。
「現実はそうはいかないよ。」
「知ってます。」
そうは言ってみても結局、私は現実主義者なわけだけど。同じくな先輩と苦笑いを向け合って歩きだした。