拾い恋(もの)は、偶然か?




だからといって、正々堂々部長と一緒に帰るなんて、私の虫以下の心臓では到底クリアできそうにないミッションだ。

しかも付き合ってまだ1日。突然ハードルが高すぎやしませんか?



[待ち合わせでいいじゃないですか。]

[同じ部署にいるのに?]


それなのにこの分からずやは、引こうとはしてくれないらしい。


「もうっ。」


スマホを握り締め、部長室のある方を睨んだ。見えるはずもないその顔がまた、好きだから締まりがない。だめだ。思い出しただけでニヤつく。


結局こうして部長に冷たく当たってしまうのは、盛り上がりまくっている自分のテンションを自重させるためでもあるのだ。


だって私は、こう見えて昨日から浮かれっぱなし。嬉しさのあまりベッドの上で跳ね跳びまくって落ちて、足を床で焼いたほどだもの。


私のことだ。こうして理性をフル動員させていないとその辺の通行人にでさえ部長を見せびらかしそう。本当は、一緒に退勤するなんて夢のまた夢。憧れていたことだ。



元カノがどうとか、社員さんたちがどうとか、先輩がどうとか、本当はそこまで考える余裕がないのが実情。浮かれっぱなっしの自分を抑え込むので忙しい。



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