拾い恋(もの)は、偶然か?




[仕方ない。待ち合わせでいいよ。]



少し不服そうでも、私のわがままを聞いてくれるらしい部長からのメッセージに、キュンとしてしまったり。だけどこのままじゃいけないなとも思う。


男性と付き合うって、何をすればいいんだっけ?

[ありがとうございます。]


部長宛てのメッセージを送りながらそう思っている私は、長らく男性と手も握っていない。もちろんキスもなければそれ以上もなく、今更自分がどういう行動に出れば正解なのかが分からなかった。


[じゃ、会社の玄関でね。]

[それ、意味ないです。]


とりあえず、部長のボケには素早くツッコめるようで安心した。


「お疲れ古蝶。部長とのラブラブメッセージもほどほどにね。」

「え!」


すでに終業時間になっていたのか、私の肩を叩いた鳴海先輩が生ぬるい目で愛想笑いをしている。どうやら、私の部長案件のトリップ癖は悪化しているらしい。まだ就業時間だったのに不味いことをしたな。


「もう仕事終わってたでしょ。オマケ。」


もう一度私の肩を叩いた鳴海先輩がそう言ってくれて、頭を下げた。



「お疲れー。」

「お疲れさまです。」


スマホを握りしめて鳴海先輩を見送れば、このフロアにはもう、誰もいないことに気が付いた。どこまでスマホに集中してたんだと、学生気分の自分に内心突っ込んだ。




< 49 / 288 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop