拾い恋(もの)は、偶然か?
[仕方ない。待ち合わせでいいよ。]
少し不服そうでも、私のわがままを聞いてくれるらしい部長からのメッセージに、キュンとしてしまったり。だけどこのままじゃいけないなとも思う。
男性と付き合うって、何をすればいいんだっけ?
[ありがとうございます。]
部長宛てのメッセージを送りながらそう思っている私は、長らく男性と手も握っていない。もちろんキスもなければそれ以上もなく、今更自分がどういう行動に出れば正解なのかが分からなかった。
[じゃ、会社の玄関でね。]
[それ、意味ないです。]
とりあえず、部長のボケには素早くツッコめるようで安心した。
「お疲れ古蝶。部長とのラブラブメッセージもほどほどにね。」
「え!」
すでに終業時間になっていたのか、私の肩を叩いた鳴海先輩が生ぬるい目で愛想笑いをしている。どうやら、私の部長案件のトリップ癖は悪化しているらしい。まだ就業時間だったのに不味いことをしたな。
「もう仕事終わってたでしょ。オマケ。」
もう一度私の肩を叩いた鳴海先輩がそう言ってくれて、頭を下げた。
「お疲れー。」
「お疲れさまです。」
スマホを握りしめて鳴海先輩を見送れば、このフロアにはもう、誰もいないことに気が付いた。どこまでスマホに集中してたんだと、学生気分の自分に内心突っ込んだ。