拾い恋(もの)は、偶然か?
これ絶対、今流行りのパワハラで認定できると思う。それほど先輩の押しの強さは常軌を逸していた。
そこで薄情させられたのは、この会社では”王道”の好きな人。
司馬翔吾が好きだと白状した私に、鳴海先輩は「お前もか。」と溜息を吐いた。
「早く告って撃沈しな。あ、でも会社辞めないでよ?古蝶は優秀なんだから。」
「……どうも。」
ウインクをしてサラリと褒める鳴海先輩は、サバサバしてて、いわゆる女の子女の子していない。どちらかと言えば男よりなこの人は、先輩としては最高の人だ。
だから、少々のパワーハラスメントは目をつぶる。
「にしてもまさかあんたがねー。なんなのみんなして。ミーハーか。」
「……先輩、それはセクハラ?です。」
「は?どこが?」
どこが、と言われると首を傾げざるを得ない。ハラスメントというワードはよく聞くけど、この不快感がなにハラスメントになるのか、種類が多すぎて見当もつかない。
「とりあえず不快だったのでセクハラにしときました。」
そう言えば、鳴海先輩が噴き出した。
「あははっ、さすが古蝶!良い!」
「……はぁ。」
背中をドンドン叩かれて痛い。鳴海先輩は置いといて、とりあえず仕事を片付けることにした。
チラリと視線を向けたのは、先ほどまで見ていた彼。珍しくフロアに姿を現した部長は、相変わらず誰かに囲まれている。その顔には、へたくそな笑顔。
あんなことをしたくせに、いつもと変りない彼にイラついた。