拾い恋(もの)は、偶然か?
「聞いてるの?」
「はぁ、まぁ。」
これだけ差があると、毒気も抜かれてしまうというものだ。さすが秘書課の人だけあって、松崎さんは10人中10人が美人と断言しそうなほどの容姿を兼ね備えている。しかも恐らく高学歴。私が敵うはずもない。
勝敗ではないけど、勝っているとすれば性格くらいか。
目の前で目を吊り上げて私を睨みつけているこの人が素敵な性格をしているとは到底思えないからだった。
いや、こんなことを冷静に考えているだけで私も結構いい性格してるかも。ならどこも勝てる場所がないじゃないか。
「喧嘩売ってる?」
「売ってるのはそっちだと思いますけど。」
「なっ、」
顔を真っ赤にしてご自慢の綺麗な桜色のルージュを歪める様は、美人だからこそ迫力満点だ。
それでも余裕の姿勢は崩したくはないらしく、松崎さんは何度も深呼吸をして呼吸を整えてから、ぎこちない笑顔を私に向けた。
「まぁ、翔吾はすぐ貴女に飽きるでしょうから。ごめんなさいね?私の方が大事にされてるの。」
部長、私、あなたがなんでこの人と付き合ったのか、分かる気がします。
「可愛かー。」
「は?」
漏れ出る天然の香り。あまり性格はよろしくないにしても、どこか可愛らしいところがある人だ。