拾い恋(もの)は、偶然か?




「あの、大丈夫、です。」

「え?」



会社帰り。結局松崎さんのことで頭が一杯で不用意に部長とエレベーターを一緒に降りて会社を出た私。

明らかに並んで歩いてたんだから、きっと明日はまた噂になってるにちがいない。


元カノがハイスペックとか、司馬部長がすごすぎて気が引けるとか、会社での立場とか、いじめとか、色々考えることはあるけれど。うん。


「部長が好きなので、今はそれでいいです。」

「……音。」


結局は、気持ち次第なんだ。

私は今、部長に恋をしている。年齢的にも少しだけ、結婚とか、将来とか、気にしちゃうけど。

「さっき松崎さんが部長室でなにをしてたか分かる?とか意地悪言われましたけど。」

「は?」

ちょっと、嫌だけど。いや、正直かなり嫌だけど。

「お、音、そんなことは決してないから!」


こうして普段、冷静沈着な人が弁明に必死な姿を見ると、なんだかどうでもよくなってしまう。


…私、性格悪いのかも。


「あ、でも部長。」

「え?」


ハイスペックだろうと、完璧だろうとなんだろうと、これは共通していること。

「私、浮気されたら、部長のこと殺しちゃうかもしれませんから。」


浮気されて泣き寝入りなんて、私の辞書には存在しない。


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