拾い恋(もの)は、偶然か?
「松崎とは確かに付き合っていた。だけどそれは、互いの利害が一致していただけに過ぎないんだ。」
「利害、ですか?」
頷いた部長は、とりあえずと言って傍にあった車のドアノブを引いた。途端にライトが一瞬光り、警戒な音と一緒に車のロックが解除される。
「これ、部長の車ですか?」
「知ってるだろ。」
「……まぁ。」
近すぎて気付かなかった。いつの間にか部長の車の前まで来ていたらしい。
「車で行くんですか?」
「ああ。行きつけがあるからそこに。」
部長行きつけの店に会社帰り、部長の車で行く、なんて。なんて魅力的なシチュエーション。
「楽しみです。」
「ああ。」
ここは素直に喜ぶ現金な私は、真摯な部長が私側のドアを開けてくれたことに更に胸を高鳴らせ、彼女の特等席助手席へと乗り込んだ。
部長が車の前を回り込んで運転席に乗り込んでくる。まだ話があるようで、エンジンはすぐにかけなかった。
車内は車の匂いと、部長の香水の匂いが入り混じる。あー、部長って感じ。なんて変態チックなことを考える。
「音は、なぜ俺と付き合ってくれてる?」
突然の質問にハッと我に返る。質問の意味が分からなくて、私の鈍い頭じゃ理解するのにかなりの時間を要した。