拾い恋(もの)は、偶然か?
「そうだな。俺もだ。」
部長のサラリと呟いたような告白。
それは思いの外私の中にストンと落ちて、なんだか心が温かくなった。
「俺と彼女の間に、それはなかったよ。」
「え?」
部長を見れば、ハンドルに寄りかかってこっちを見ている。その笑顔は寂しそうにも見え、諦めにも見えた。
部長と彼女の間に、何があったのかは分からない。だけど少なくとも部長にこんな顔をさせるくらいには、彼女の存在は大きかったんだと思う。
やっぱりかなり、嫉妬してしまう。
でも。
「そう、ですか。」
「ん。」
本当は、元カノとの関係なんて話してくれなくていいと思う。だけど松崎さんと部長のことは、聞いておいてよかったとも思う。
「分かりました。」
「え?」
松崎さんがどうだろうとなんだろうと、彼女は今部長にこんな顔をさせてしまっている。私はこんな表情させたくない。いや、させるもんかと思った。
「いいんです。もう気にしてませんから。」
「……音。」
納得がいっていないような表情をしているけど、これは本心だ。
「はい部長。発射!」
「……ミサイルじゃないよ。」
俄然、燃えてきた。今は彼女の存在は大きいかもしれないけど、いつか私が、忘れさせたい。