拾い恋(もの)は、偶然か?
「はぁ。」
松崎さんが、深い、深い溜息を吐いた。諦めたような表情。その寂し気な表情は、昨日見たものだ。
「まぁ、とにかく、悪かったわね。」
「はぁ。」
雰囲気から、さすがに親子丼を食べながらはだめだと思って、残念だけどスプーンを置いた。だけど私の口からは、気の利いたことなんて一切出ないらしい。
「悔しかったのよ。逃がしたら凄く勿体ないって思ったの。」
プイとそっぽを向いた松崎さん。発言は最悪なのに、なぜか嫌悪感はない。それはなぜか?
「だって部長って、ものすごく優良物件でしょう?キープしておきたかったのよ。」
松崎さんが、とても寂しそうに、苦しそうに言うからだった。
「好きだったんですねぇ。」
「……だから、違うわ。」
プイとそっぽを向く松崎さんはきっと、部長のことをとても好きだったんだろう。私も部長のことを好きだから分かる。
「うんうん。好きだったんですね。」
「だから、違うって言ってるでしょ!」
机を乱暴に叩いた松崎さんの怒声に、食堂が一瞬、シンと静まり返った。
「ごめんなさいー。すいませんー。」
鳴海先輩が完全な棒読みで謝って、どうにかなかったことに。恥ずかしそうな松崎さんの顔が真っ赤なのは、それのせいだけじゃないはずなのはもう、分かっていた。