拾い恋(もの)は、偶然か?




「要するに、もう別れたのにあんなことやってすいませんって言いに来たんですか?」

「……ほんと、あんた良い性格してるわね。」

「ありがとうございます。」



そこははっきりとスマイルで言う。昨日から、というか部長と付き合う前からこの人のことでモヤモヤしっぱなしだったんだからほとんど八つ当たりが含まれているけど。


「はぁ。なんだか気が抜けたわ。」


そう言った松崎さんは割りばしを鳴らすと、うどんを豪快にずるずる言わせながら食べ出した。意外と、豪快。



「ふん。」


もぐもぐさせながら松崎さんは私へ向けて顎を上げてみせる。どうやら親子丼を食べろと言っているようだ。苦笑いで頭を下げて私も食べる。少々冷めているせいか、先ほどよりはやはり味は落ちてしまっている。だけど、美味しい。さすが部長チョイス。



向かいの鳴海先輩を見れば、もう食べ終わった空の食器を眺めてなにやら考え込んでいる様子。どうやら、何かに気が付いたらしい。視線を上げた先輩は、ものすごい早さでうどんをすすっている松崎さんをまっすぐに見つめた。


「松崎さんって確か今、大学生と付き合ってますよね?」

「ぶふっ、」



先輩の指摘にうどんを噴き出した松崎さん。大丈夫かな?なんて思っている場合じゃない。なによ、付き合ってる人がいるなら昨日私が受けた嫌がらせはほんとになんの意味もない嫌がらせってわけ?


少なくとも気持ちがあるものならまだしもそうじゃないのなら色々違ってくる。



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