拾い恋(もの)は、偶然か?
ジロリと松崎さんを睨みつければ、「何よ。」と自分以上の睨みで返された。くそう、この迫力には勝てないぜ。それでも、私は負けない。
「彼氏っすか?」
「……まぁ。」
不貞腐れてる感凄い。彼氏いるくせにあんなことしたくせに。呆れてしまった私の視線に耐え切れなくなったのか、松崎さんが溜息を吐いた。
「いいでしょ。だって彼の方が有望だし。」
「は?」
絶句する私。呆れきった声の鳴海先輩。茫然とする私たちを前に頬杖をついた松崎さんは、爪を見ながら呟いた。
「翔吾、会社継がないのよね。んで、ほんとの後継者が今の彼ってわけ。」
「最低じゃん。」
思わず口から出た言葉は、どうやら松崎さんには響いていないらしい。あっけらかんとした表情で私をまっすぐに見る彼女の目には、一切の曇りがないのだから。
「えだって、お金がある方に流れるでしょそれは。」
「清々しいな!」
思わず今度は強めに声を出してみる。もういっそ、ここまでくると清々しい。さっきまで部長のことが好きな純粋な松崎さん像がガラガラと崩れ落ちていく。
私の同情と悲しみを返してほしい。