拾い恋(もの)は、偶然か?
コーヒーショップから出てきたのに、コーヒーすら持ってない。もしかして初めから部長が目当てだってりして。なんて、ゾッとするような想像をしてみる。
「部長、食べにくいんですけど。」
不思議な七瀬さんを分析しながら口に運ぶ朝食プレートは、さすが人気店だけあって美味しい。確かにカロリーを気にしてたら食べれないけどね。
そんな私の何が面白いのか、部長がひたすらニヤニヤしながら見つめるもんだから、そんな文句もつい口をついて出てしまう。
「ごめんごめん。」
「ごめんと思ってないですよね?」
「うん、ごめん。」
何が楽しいのか、一緒にいる時の部長はいつもこうだ。まるでいつまでも見つめていたいとばかりに私を見つめている。
ほら、今も。注意しても全くやめる気はないらしい。それに自分も慣れてしまったのか、もはや大口を開けて目玉焼きを頬張れる。
ん、おいひい!
「あ、音。」
「っっ、」
「付いてたよ。」
だけどですね、"口端にドロッとやっちゃった黄身を指ですくわれて舐められ慣れ"はしていないわけです!
「ぶ、ぶ、ぶ……。」
「美味しいソースだな。今度俺も注文しよう。」
顔が火照る私とは裏腹に、涼しい表情の部長は何度も頷いてみせる。