拾い恋(もの)は、偶然か?
「っっ、」
そこへ寒気が。漂う殺気の方へ視線をやれば、スマホの影から七瀬さんがものすごい形相で私を睨みつけていた。
ひいいいい!可愛い顔してそんな表情できるんですか!松崎さんも真っ青な睨みは今にも私を射殺す気満々だった。
だけどなぜか急転、七瀬さんは口角を上げる。高々と上がる鼻先は、明らかに私を下に見ていた。
「司馬さん、会社までご一緒しても?」
「ん?無理だね。あ、音、送っていくからゆっくり食べな?」
「「……。」」
部長のナイス対応。またもや食らった睨みに今度はニッコリ笑う余裕がある。うん、さすがに優越感。
だけどここでめげないのが、鳴海先輩命名の、超肉食女。
「でもぉ、この間のミスの件でまだお話しなくちゃいけないことがあるんです。」
そこはなんとか食らいつくつもりらしい。
「それは会社で聞くから。」
「今すぐの方がいいと思いますよ。」
「時間外だろ。」
「でも、一刻を争うんです!」
部長に食い下がりながら、私に視線で圧力をかけてくる。これは、うーん。
「あの、部長、私は一緒でも構いませんよ?」
ここはこう言うべきなんだろう。だって本当に今伝えないといけないようなことだったら、会社に打撃を与えかねないのだから。