拾い恋(もの)は、偶然か?



ここで問題です。


これから全員会社。七瀬さんと部長には話があります。だけどプライベートだと私が彼女。そういうシチュエーションでの、車の席順は?



「「……。」」


当たり前に助手席に乗ろうとする七瀬さんと視線での攻防。



---いやいやいや、それはさすがにでしょ。確かに話しにくいかもしれないけど、貴女が助手席っていうのはさすがにない!



---は?私には話があるわけ。仕事のことだし、当たり前に話しやすい助手席は私でしょ!



と、無言で睨み合うわけだけど、強行突破がお得意の七瀬さんが助手席のドアを開けてしまう。


「ちょ、」


ムッとして何か言おうと思っても、ここで何か言うのは違うんだろうか?と持ち前の小心が顔を出す。一応、これから仕事だし。しかも仕事の話をするらしいし。だけど、うーん。



「……話しにくいだろうけど、さすがに後ろに座れ。」


運転席から低い声を出した部長の言葉に救われなかったら、敗北を喫していたらだろう。


「すみませぇん。」

「音、前。」


それにしても、なぜか部長が不機嫌そうで、いい年して舌を出す七瀬さんじゃなく、私を睨んでいる気がする。




< 84 / 288 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop