拾い恋(もの)は、偶然か?
部長の数々のお付き合い列伝を知っていても、女遊びが激しいとかすぐに浮気しそうとか、そういうのは思ったことがない。
「部長はもっと、うーん、あ、綺麗!綺麗、というか。」
俯く部長が何を思っているのか分からないけど、私が何か言うたび、どんどんドツボにハマっていっていることは分かる。
静かな車内。もはや何を言っていいのか思いつきもしない私は……。
「すいません。」
とりあえず謝るしかない。
なんと言えばいいんだろうか。確かに私は、部長が好きで、こうして車の隣同士で座るだけでもドキドキしてしまうほどだ。もちろん、七瀬さんの強引さにはイラつくけど、なんだろう、あの人の場合空振りしてる感が否めない、というか。
肉食過ぎて、巧妙さがない、と思う。
こうやって冷静に分析できてしまうほど、七瀬さんは私にとってそこまでの存在ではないということだ。
それは、彼女であることの優越感とか、自信とかそういうんじゃない。言ってみれば明らかに彼女の作戦ミスと言わざるを得ないということだ。
きっと私の立場が松崎さんなら、鼻で笑って一蹴するだろう、なんて。結局私は、松崎さんのこともあまり脅威には思っていない。
私の中での部長像は、大きく膨らんでいて、付き合ってからもそれは悪化の一途をたどっている。