拾い恋(もの)は、偶然か?
好きだからこそ、嫌われたくない。それは当たり前に思うことじゃないんだろうか。
「音。」
「はい。」
俯いていた部長が、ゆっくりと顔を上げる。かち合った真剣な表情に、胸が高鳴った。
「えっ、」
。カチン。シートベルトの外れる音が聞こえたと同時に突然近付いた距離。部長の息遣いまで伺える近さに、呼吸をしていいのかどうかも分からない。
「ぶ、ちょう?」
まるで私に覆いかぶさっているような態勢は、まるで抱きしめられているよう。真剣な表情の部長が目を伏せると、ゆっくりと近付いていくる。
一際胸が大きく高鳴る。頬に感じた唇の感触は、なんだろう、今までのどんなキスよりも、エロティックに感じた。
「これから、ガンガン行っていいの?」
にやりと笑う部長は、現実でも妄想ですら見たことがない。どこに隠していたの?そう思うほど、今の部長に男を感じた。
朝の出勤時間。外は人がせわしなく歩いている中、路上に停めた車の中で、官能的に迫られている。
「ええ、と。」
自分でも笑ってしまうけれど、いざこうなってしまうと緊張して何も言えなくなってしまうわけで。ただ部長を見上げることしかできない。