拾い恋(もの)は、偶然か?
部長の秘密
「最近どう?部長とは。」
「……会ってませんね。」
「え!」
鳴海先輩には悪いけれど、部長との話なんて一つもすることがない。
あの日ああいう話をしてからというもの、部長の様子がおかしくなってしまった。
別に避けられているわけじゃない。退勤後、送れる日は送ってくれるし、電話だけど話もする。
デートができないのは相変わらず。部長の忙しさにプラス、七瀬さんのミスが増え、そのフォローのせいか部長どころか課長も、係長だって大忙しだ。
普通ならクビレベルだと思うけど。それをなぜかクビにしないのが、この会社の不思議なところだ。
なんとなく私も、あの日の部長が見せた一面に、踏み込めないところがあった。遠慮とは違う。怖がっているのとも、違う気がするな。
待つしかない、そう感じた。部長のあの日の苦しそうな横顔を見て。
「でもさ、最近常に一緒にいるけど。いいの?」
鳴海先輩の指差す先には、もはや専属の秘書のように部長にくっついて歩いている七瀬さんが。自分のミスのせいで部長まで動いているのに図々しいと、他の女子社員からも総スカンを食らっている。