拾い恋(もの)は、偶然か?




「よくは、ないです、けど。」


七瀬さんのミスとはいえ、仕事上一緒にいなければならないのなら、いくら私が部長と付き合っているとしても、口を出すことはできない。


「ほんと、古蝶って真面目過ぎ。」


公私混同をしないというのは、確かに社会人としては当たり前のことだけど、本当は、そんな自分が嫌で仕方がない。仕事とか、そういうの、恋愛では全て取っ払ってしまいたい。本当はものすごく嫌だ。この場で七瀬さんを平手打ちでもして、なんでお前のミスを部長が片づける必要があるんだよ?なんて暴言を吐いてやりたいくらいだ。


だけどそんなことをできない、妙なところ真面目な自分を、時折恨めしく思う。


「でもさ。」


顔を上げれば、鳴海先輩が笑っている。


「嫌いじゃないよ。真面目な古蝶。」


爽やかにそんなことを言われちゃえば、胸キュン間違いなしだ。


「ありが、とうございます。」

「ん。」


なんとなくお互い照れてしまう私たち。チラリとまた部長たちを見たけれど、鳴海先輩のおかげか、さっきよりは気持ちが楽な気がした。





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