拾い恋(もの)は、偶然か?
「ここ、いい?」
そう言われて、私と鳴海先輩は、一斉に松崎さんを見た。
「な、なによ。」
口を尖らせるこの美人のせいで、デジャビュを感じたからだ。その後視線を移した松崎さんは、ニコニコしながら返答を待っている。
まぁ、なんというか、満場一致でできれば七瀬さんには、別の場所に座ってほしい。だけどそんなことを気にもしない七瀬さんは、うどん一杯と水が載ったお盆を机に置いて、結局目の前に座ってしまった。
「あ、鳴海さん、七味取ってくれる?」
「はぁ。」
何気なく鳴海先輩を使うあたり、ますます分からない。私の中で鳴海先輩は頼れる先輩で、仕事のミスをしたところなんてほとんど見たことがない。だけどこうして先輩として接している辺り、七瀬さんは鳴海先輩よりももっと上の先輩で、個人差はあるにしろやっぱり、連日のミスが信じられなかった。
「ごめんなさいね。」
「え?」
七瀬さんが間を埋めるように、うどんをすする。なぜ一本ずつなのかは分からないけど、ものすごく時間がかかりそうなのは確かだ。そして咀嚼しながら上げられた視線は、まっすぐに私を見て笑っていた。
「部長を、連日お借りしてます。」
「は?」
低い声を出したのは、もちろん出遅れた私じゃない。七瀬さんを今にも殺しそうなほど睨みつけている、松崎さんだ。