拾い恋(もの)は、偶然か?
デートができないとか、一緒に帰る機会が減ってるとか、そういうことはどうでもいい。仕事のこととはいえ、部長を困らせているこの人が、そのことで笑っていることがとても腹立たしい。
私の言葉に、七瀬さんはジッと見つめ返してくるだけ。その不思議そうな表情にイライラが増していく。
「どうして?」
「え?」
首を傾げる七瀬さんは、お箸をお盆の上に置いてひと呼吸置くように水を口に含んだ。上げられた視線は相変わらず、挑発するように私をまっすぐに見つめている。
「仕事のミスだとしても、部長は私の傍にいてくれているの。それがきっかけで、私と部長がってこともあり得るでしょう?それを利用してなにが悪いの?」
「っっ、」
七瀬さんの衝撃的な言葉に言葉を失った。私と同じく、ずっと静観していた鳴海先輩も、イライラしていた松崎さんも、あっけに取られている。
茫然と見る私たちを前に、七瀬さんは口元に指を添え、クスリと笑った。
「本当に悪いと思ってるのよ?だけどそれを利用しないわけないじゃない。」
あまりの言葉に、一瞬で頭に血が上った。気が付いた時には、机を叩いていて。
「最低ですねっ。」
思わずそう言っていた。