君と、世界が変わる瞬間に。
急に先生に呼ばれ、廊下に出てみれば、なんだか少し怪しげな感じがした。
「実はな、頼みたいことがあるんだ」
頼み…
「この資料…生徒会のやつなんだが…作ってくれないか?」
「生徒会の?…なんで私に…」
「生徒会も忙しくて仕事が回らないらしい。んで、だれかにと思ったんだ。お前なら俺も任せられると思うし生徒会のやつらも期待してるから」
はい、と無理やり渡された紙の束。それを見てやっぱり私は変わらないな、と実感した。
頼みとか期待とか、どうしても答えたくなる。嫌われたくない、好感度を上げたい。そういう自分の本質はきっと、変わらないんだと思う。
いつからだったか。こんな風に考えるのは。
あぁ。…きっとあの時からだ。…小学生のころに加藤諒太と出会わなければきっと、私は違う私になっていた。ひとの顔色をうかがってばかりの私じゃなく、空気を読んでわらう私でもなく。
「はぁ」
ため息ついて、目を瞑る。
大丈夫、夕凪君とみた空が私を少し、救ってくれる。
「…よしっ」
私はそれをもって教室へと戻っていった。