君と、世界が変わる瞬間に。







ー…


「結局終わんなかったな」


「だよねぇ~量がハンパないもん!」


生徒会の資料は休憩時間を使っても、放課後までに終わらなかった。


「ごめんね瑠璃。手伝わせて…」


「いいのいいのっ!…その代わり、夕凪君とのことなにか進展あったらすぐに報告ね!」


ほんと、瑠璃にはかなわないなぁ…。


「ありがとう」


「いいってことよっ!」


それから私たちは作業を進めた。それは30分くらいかかってやっと終わり、ちょうど職員室に持っていこうとしていた。


「あっ、私が持ってくから、空はちょっとだけ屋上見てきなよ!」


「え?!」


「まだいるかもしれないし!昇降口で待ってるからさ!」


トンッ…と瑠璃が私の背中を押した。私は一瞬ためらったけれど、走り出した。




「はぁはぁ…はぁっ…」


ーガチャー


ギィと扉が鳴った。


「ゆ…凪…君…っ」


まるで世界でたった独りのような、それでいて、真っ赤に染まる夕焼けに守られているような。…なんとも言えない景色がひろがっていた。

左から差し込む夕焼けの眩しさが、屋上のど真ん中でポツンと横になり眠っている彼を照らしていて、ここが私の知っている世界とは違う世界のような気がした。



「……君の世界を見たい」



「ん…」

ーハッー


な、なんてこと言ってるんだろう!恥ずかしぃ…。よかった眠っててっ!……っていうかそれよりも、夕凪君起きるかな?


「ゆ、夕凪君…もう放課後だよ」


………起きない…。


「夕凪君っ!起きてー!」


なかなか起きない彼の耳元にもう少し寄ろうと思い、身を乗り出した。


「ん…」


自分の髪が彼の顔にかかっていたことに気づいてから、彼の顔も近いことに気がつく。

ちちちちち近っ…!!!


すぐさま離れようとしたら…


「…髪、きれいやな」


髪の束を夕凪君が掴んでいた。


「ゆっ夕凪君!!…おおお起きてたんだっ」


「ん~っ!…今起きたっ!」


今が夕暮れ時で良かった。


「もうこないな時間かっ!!…帰らんとな」


だって、こんなに顔が赤くなっていても夕焼けのせいにできるから。



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