君と、世界が変わる瞬間に。
「あれ?空ちゃん」
「…あっ…夕凪君のお兄さん!」
「わー、偶然だねぇ」
この前あったのはバイト先のカラオケで、今日はここで会うなんて…本当にすごい偶然だ。
「空ちゃんの家の最寄りの駅ってここなんだ~」
「はい」
「……ね、よかったこれからお茶しない?」
「え?」
「あはは、ナンパとかではないから心配しないでね。…ちょっとお話したくてさ」
断る理由もなかったので、私とお兄さんは駅前のカフェに入ることにした。
ーカチャー
「……うん、ここのコーヒー美味しい!通っちゃおうかな~」
「あ、あの…お兄さん…話って…」
「そういえば、名前言ってなかったね!…夕凪晴人。お兄さんって呼ばれるの変な感じだしね」
「じゃあ…晴人さん…」
「うん!」
なんだか読めない人だな…。
「そうそう、話なんだけど…空ちゃんって、まだあそこのカラオケ店でバイトしてる?」
「い、いえ…」
「そう、よかったぁ!あそこはもうやめたほうがいいって思ってたんだよねぇ!店員も態度悪いし、働かないしっ!」
ひどい言われようだな…あってるけど。
「まぁ、そんなのは後付けなんだけどさ」
「後付け?」
「…俺、バリスタ目指しててるんだ」
ば、バリスタって…確か、カウンターに立ってみずからコーヒーを入れる人…だったような…。
「それでね、近々店をもてそうなんだよねぇ~」
「え、すごいです!」
「ははっ!……それでさ、もし良ければ働かない?」
「……え?!」
「空ちゃんなら健人のこととかも話せるし、見た限り要領よく仕事とかこなしてくれようだしね。…それに、女の子もいた方がイマドキっぽいでしょ?」
晴人さんのお店で働く…
「もちろん、辞めたくなったらやめてもいいし。無理強いはしないよ」
バイトって聞くだけであの時のことが脳から離れなくなる。…でも、晴人さんのところなら…
「…やります」
「ほんと?!…よかったぁ!」
一応…明日夕凪君にも言った方がいいよね?
「あ、健人には今日俺から言っとくよ」
「…はい」