君と、世界が変わる瞬間に。
「…ん…」
「あ、起きた?!」
「五十嵐…く…ん。ここは…」
「保健室だよ!雨野倒れたんだ…」
あぁ。…やってしまった。…目の前にいる五十嵐君にも迷惑かけてしまったな。
「…俺のせいだよね。…ごめん。顔なんて見たくないかもって思ったけど…」
私は横になっていた体を曲げて、五十嵐君の方を見た。
「ううん。…あのね。私、五十嵐君のこと怒ってないよ」
「…そんなわけ…っ」
「本当に」
だって五十嵐君は、加藤諒太に逆らえなかった。それだけでしょ?
「…気にしなくていいよ」
「でも…俺……あれからずっとそのことが忘れられなくて…。…雨野に悪いことしてしまったって…ずっと後悔してて」
「……私は、全然覚えてなかった。…だから忘れてて良かったんだよ」
君がそんなに傷ついた顔しなくていいのに。
「………五十嵐君はずっとそのことを後悔してくれてたんだよね?…きっとその間…五十嵐君はみんなに優しくなれたと思う。みんなを大切にできたと思う。」
「でも俺はっ…」
「最後にちゃんと言って終わらせよう」
そういうと五十嵐君は顔をクシャッと歪めて頭を下げた。そして声を震わせながら
「ごめんなさい…っ」
と、謝った。
「…うん、許します」
「…っ」
その瞬間、五十嵐君は泣き出した。…きっと、ずっと溜め込んでいたものが溢れたんだろう。超えを堪えず、子供のように泣いた。