君と、世界が変わる瞬間に。
ー…
「落ち着いた?」
「…うん。…ごめん」
「そこで謝らなくていいのにっ」
五十嵐君は泣き腫らした目で笑った。
「…これからは友達として、仲良くしてくれる?」
「雨野はそれでいいの?」
「うん」
きっと五十嵐君とはいい友達になれると思うから。
「…あ、あのさ。…五十嵐君…」
「うん?」
「加藤諒太と連絡とってたり…する?」
そう聞くと彼は苦痛に耐えるかのような顔をした。
「…とってないよ。…でも、加藤の友達となら…まだ連絡はする」
「そっか」
「…加藤に逆らえないって言うの…なんか卑怯ない気がするよな。…」
「…そうだね。…でも、しかたない」
しかたない?…そんなわけないじゃん。受ける方からしたらみんな加害者。しかたなくなんかないんだ。
それなのに五十嵐君を覚えてないって言うのは、理由があった。五十嵐君は私に1度しか嫌がらせをしていない。それと、もうひとつ……
「あ、そろそろ教室戻る?…1時間目終わっちゃったけど」
「そうだね」
ーガラガラー
「あ、私…渡り廊下渡らないと。ここで」
「うん、また」
「またね」
…もうひとつの理由はね。
五十嵐君がいた時……私が嫌がらせを受けた小学6年の時に比べて、彼が中学受験していなくなった中学1年の時の方がずっとずっと苦しかったからだよ。
小学生の時のことが可愛いくらいに思えるほど、辛くて…悲しくて…。
だから、覚えていなかったんだと思う。
そして、許した理由について。本当は許すつもりなんてなかった。一生後悔すればいい。って思う。…昔はね。
でも今は、彼が後悔して苦しんだならそれでいいった思っちゃう。きっと、夕凪君のおかげだ。夕凪君のおかげで私は少しだけ変われたから。
ーピロンー
「びっくりしたぁ…なに?五十嵐君…?」
先ほど連絡先を交換して別れたはずの彼からメール?
《余計なことかとおもったんだけど………雨野、もし加藤に関わろうとしてるならやめといたほうがいい。…あいつは今でも変わってない》