君と、世界が変わる瞬間に。











「そいえば、雨野さん…B棟行ったんやって?」


「え、あ…うん。」


なんで知ってるんだろう?……古田先生に聞いたのかな?


「どうやった?」


…な、なんだか…笑っているのにいつもの夕凪君ぽくない。


「特に、何も無かった…よ」


「そうか」


すると夕凪君はホッとしたように笑った。私も気のせいだろう、と思い「あ、でも…」と続けた。


「小学校の頃の同級生に会ったかな」


「え?!」


するとさっきとは変わり夕凪君は驚いたように私のほうに体を向けて、焦ったような顔になった。


「…その人の。な…まえを…きいてもええか…?」


「い、五十嵐君…って言うんだけど…」


「……なにか、言われた?」


「え?…ううん。ちょっと昔喧嘩したまま別れたから、誤ってくれて一応友達ってことにはなったけど…」


どうしてこんなに夕凪君は焦ってるの?もしかして五十嵐君のことを知ってる…とか?


「……なぁんだ。びっくりしたわぁ」


へ?!


「どないした?行こう」


いつもの夕凪君に戻った?なんで?!なに?!どういうこと?!


「あ、の…」


「B棟ってちょっと変な噂あってん。やから少し心配しただけや、気にせんといてな」


なんだ……それだけ…。

ホッとしたのに、それが本当かどうか疑ってる。本当にそれだけなの?夕凪君……


「あ、もうここら辺で大丈夫か?」


「うん…ありがとう」


「じゃあまた明日」


手を振って見送る夕凪君の背中。私、彼のことが好きなはずなのに…彼のことほとんど知らないんじゃないかな…

今更私はそれに気づいた。近づいたと思っていた距離が、たちまち遠くなっていく気がした。

夕凪君、私は君の心に入れませんか…?





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