君と、世界が変わる瞬間に。
「……嫌な夢……見ちゃった…」
熱があるからかな。…最悪な目覚めだ。……きっと中学の頃の記憶。加藤諒太の記憶。
「うっ…ゴホッ……ゴホッ…」
……吐きそう…。
誰も助けてくれない、誰も私の味方をしない。苦しくて苦しくて、死んでしまいたいくらいの苦痛。
それはまるで水の中で必死に空気を得ようと足や手をジタバタさせているのに、体はどんどん深く沈んでいって、息ができないみたい。
そんなのが嫌だから私は誰かに必要とさせていたい。…先生の頼み事を喜んで受けるのも、友達に頼りにされるのも、全部全部、私がここにいていいっていう理由があるから。
でも、最近は変わった気がする。夕凪君が転校してきて、瑠璃と話し合って、そして世界の見方がかわって。
全てのきっかけが夕凪君で、私の支えが夕凪君。彼に会えて本当に良かった。
ーピリリリリー
ービクッ!ー
な、なんだ…電話か。……あれ?知らない番号…?
「……はい、もしもし…」
『あ、空ちゃん?俺、晴人。健人の兄の!』
「晴人さん!」
『よかった。…健人に番号聞いちゃってね、今大丈夫?……一応昼休みだと思ったんだけど』
「大丈夫です!」
心配させるだけだし、風邪で休んでることは言わなくていいか。
『じゃあ明日とりあえずお店に来てもらえるかな?』
「え、お店もう出来たんですか?」
『できたって言うか、中の改装がって言うか……現女子高生の君の意見も聞きたくてね』
……う、代表できないよ。
「私でいいん…ですか…」
『あははっ!いいんだよ!…場所は案内するから南口駅まで来てもらえる?』
「わかりました!」
『うん、ありがとう!じゃ、お大事にね』
「はい!」
ーピッー
「……ん?」
″お大事にね″ってまさか…知ってた?!!夕凪君に聞いてたのかな?!いや、そもそも鼻声だったせい?!……わぁ、晴人さんってなんだか前から思ってたけど、読めない人だなぁ。
「とりあえず……明日にはなおさないと」
そのためには今日は安静が1番だな。…またあんな夢を見るのは嫌だけど、寝るのが1番の
薬だよね。