君と、世界が変わる瞬間に。
【放課後】
「空!!明日はちゃんとオシャレしてくるんだよ!時間に駅にね!」
「うん!」
……って、オシャレとは…。はぁ。
「……晴人さんとこ行こ…」
明日のことはまず忘れ、今日は晴人さんのお店のアイデアだしなんだよね!
私は急いで学校を出て駅に向かう。そして、電車に乗って南口駅で降りた。…ここで待ってるように言われたけれど、まだ晴人さんの姿は見えない。そういえば、時間は指定されなかったことを思い出した。
「電話…したほうがいいのかな?」
でも待ってるように言われたし…。うーん、どうしたものか。
「空ちゃん!」
「…晴人さんっ」
「ごめんね、待った?」
「今来たところなので大丈夫です!」
「良かった。……ってこのセリフ、恋人みたいだね。しかも普通逆なのに」
言われてみれば確かに。…って、それじゃあ私と晴人さんが恋人みたいってこと?!……うわぁ、晴人さんに申し訳ない。
「とりあえず、行こっか」
「…はいっ」
晴人さんが開くというお店は駅から10分くらい歩いたところだった。私はこの駅で降りることはほとんどないので、お店までの道がすごく新鮮だった。
「ここだよ」
「わぁ…」
なんだかオーラのある店だ。
「看板とかはまだだしてないし、全然家具も改装もしてもらってないけどね。はい、空ちゃん入って」
「おじゃまします」
「…これ、一応今のところ中の様子を絵で描いてみたんだけど。空ちゃんの意見も聞かせて」
すごい。…本当にこんなお店になったらきっとお客さんたくさんきてくれる。
「……私、これでも素敵だと思いますが…」
「うん、友達もそう言ってくれるんだけどね。なんかちょっと違うの気がして…何が違うのかわからないけど……」
晴人さんは自分のお店をもつのに、イメージがあるのかな?
「…晴人さんはどんなお店にしたいんですか?」
「……疲れた大人がここにいてフッと一息つけたり、若い子たちが楽しそうに話をしている。そういう感じを俺はコーヒーをいれながら見ていたい。そんなお店……ってごめん、わかんないよね」
「いえ…」
つまり、人がたくさんとかそういうのじゃなくて、人が心を寄り添わせる店。
「お客さんにたくさん来ての欲しいっていう願望はないんですか?」
「うん。悩んでる人や苦しんでいる人が立ち止まってこのお店に入ってきてほしい。少しでも俺のコーヒーで軽くさせてあげたい」
すごく素敵だ……。私も、それに協力したい。
「だったら、ここのテーブルひとつはずしましょう!」
「え?」
「晴人さんが、ここに立って、もっとお店全体を見渡せるように!……あと、イスとかテーブルの種類ですけど。…今どき風じゃなくて、木のものがいいと思います!……落ち着くし、雰囲気あるし」
私は描いてある紙に新たにいろいろつけくわえた。すると晴人さんはその紙をみながら肩を震わせていた。
「うん……いい!!…俺が求めていたの、これだよ!……ありがとう空ちゃん!!」
よかった。私にも、役にたてたんだ。
「空ちゃんがいてよかったよ」
そう言ってもらえて凄く嬉しい。晴人さんは私を必要としてくれて、存在を認めてくれた。ありがとうと言いたいのは私の方だ。
「ね、良かったらさ。明日もこない?…コーヒーいれてあげるよ。……まぁこんなところでなんだけどね」
「あ、明日は一応用事がありまして…」
「うーん。じゃあその後にでも。……俺一応明日はずっとここにいるし、ね?」
「じゃあぜひ!」
「うん」