君と、世界が変わる瞬間に。
ー…
「瑠璃〜!!…ごめんね遅れちゃった」
もしかしたら、私にバチが当たったのかもしれない。
「ううん!あ、この人が言ってたひと!」
私はスッと顔をそっちに向けた。……それはまるでスローモーションかのように。私はその男から目が離せなかった。
ーカンッー
カラカラカラ…と買ってきた缶が音を鳴らしながら転がった。
「空?」
きっと、今まで上手くいきすぎたんだ。…私はきっとずっと加藤諒太に縛られて生きないといけない。……私の心が黒く、汚れていく気がした。
なんで。どうして。…私は逃れられない。会いたくなかった。2度と…
「……どうも、加藤諒太です」
この男には。
「空、どうかした?」
「……な、んでも……ない」
かろうじてその言葉をいうことが出来たけど…私は動けなかった。足がガクガク震えていて、脳が上手く機能しなくて、涙が溢れそうで。もうとにかく吐きそうだった。
「あ……こ、この子は雨野空って名前なんだけど……今なにかあったみたいだから、ちょっとお手洗いに……」
「いや、待って。……大丈夫?空ちゃん」
ポンッと肩に触れた肩が腐っていくように感じて反射的に振り払っていた。
「え、空?!」
「はぁ……はぁ…」
「どうかした?空ちゃん」
ニコッと笑うこの男が憎くて憎くて仕方ないのに。体はそれよりも強く、恐怖が染み込まれていた。
「ほら、大丈夫だよね?」
ゾワッとした。
「大丈夫…だよ、瑠璃」
″そう言え″と目で言っていた。
「でも……」
「大丈夫」
1度落ち着こう。
震える手を隠しながら私は瑠璃に笑った。
「…雨野…空です」
「うん。…あ、こいつは、野村颯。」
「よろしく」
「じゃ、じゃあ行こっか。……空大丈夫?」
「うん」
私は心配してくれる瑠璃になんでもないから。と心配させないように必死に笑顔をつくる。
「よく我慢したな。気づいてたんだろ?」
瑠璃と野村颯という男が話をしている時に、後ろの方で私にひっそりとした声で話しかけてきた加藤諒太。
「……」
「答えろ」
「き、づいてた」
なんで答えるのよ。……こんなやつに。
「……あの子、可愛いよね」
あの子?
「瑠璃ちゃん」
「瑠璃に変なことしないで!」
言って後悔した。…この男が私が嫌がることをすると確信したから。……だけどそれと同時に、後悔したことを後悔した。…たとえこの男が嫌いでも、瑠璃には手を出して欲しくないって思うのに。
「俺さ、知ってたんだよ。……瑠璃の友達がお前だってことを」
ー!!!
「だから瑠璃にかまうの?!」
「うん。別に俺あの子好きじゃないし。ちょっと優しくしただけなのに、コロッと落ちて。ほんとバカだねぇ。…」
「……っ」
「…言っちゃえば?…俺のこと」
「…言うに……決まってる」
でもそれは今じゃない。…今は、この男から逃げられない。
「でもさぁ、どっちをしんじるかなぁ?」
「もちろん私をしんじてくれるっ」
「そうかぁ?…だって、お前の味方は誰もいないだろ?……そう教わったよな?」
ービクッー
違う。瑠璃は違う。
「あの子は今俺に夢中だ。告白でもしてやれば、お前からは離れるだろうよ」
瑠璃はそんなこと……
「所詮、お前は……クズなんだからなっ」