君と、世界が変わる瞬間に。
信じてくれると思っていた。……だから言った。…でも瑠璃は信じてはくれなかった。
「ーっ…」
涙が出そうなのをグッと堪える。唇を噛んで、上を向いて。絶対涙なんか流してやるもんかって。
…そして私は、走り出した。…どこにって言うわけじゃない。……だけど、晴人さんの約束していたから。それだけは、まだ残っていたから。
ーガチャー
「あ、空ちゃん」
「晴人さん…。…すみません。コーヒー頂きに…」
「……空ちゃん、どうかした?」
「え?」
「つらそうな顔してる」
なんでここに来たかわかった。……昨日晴人さんが私の存在を認めてくれていたから。
「……私っ…」
「…とりあえず、座ろっか。コーヒーいれるから」
私は端っこのテーブルに座る。
「ちょっと待っててね」
コーヒーをいれる音だけが響く。……それはまるで、夕凪君といる時のカメラの音と同じような感覚で、すごく安らいだ。
ーコトッー
「はい、めしあがれ」
「いただきます…」
ゴクッと、1口飲んだ。
「……おいしい」
「ははっ、良かった。…俺少しこの店開けるけど……なにかあれば連絡して」
「はい」
きっと、心配してくれていた。……でも何も聞かずにひとりにしてくれて、しかも、コーヒーまで入れてくれた。そんな晴人さんに心の中で感謝した。
「……」
加藤諒太との再開は、あいつに決められていた。あいつは私が瑠璃の友達だから瑠璃に優しく振舞っている。
瑠璃も信じてくれなかった。きっと、今度あった時は話さえ聞いてくれない。
「ーっ…」
なんで?……どうしてまたあの男に振り回されないと行けないの?!……小学校の時も中学校の時も!……あいつのせいで私は毎日を呪った!!
友達も出来ないで、1人で耐えてた!
やっとできた高校での友達さえも…あいつの手で奪っていくの?…私はあいつから、逃れられないの?!
「う、うわぁぁぁぁぁん!!!……」
とめどなく涙がでた。
あいつの喜ぶ顔。……私の全部を奪って笑ってるあいつが嫌い。……なんでもかんでも壊していかあいつが憎い。
「どうしてっ!!……私がいつもいつも!!……グスッ…なにもしてもどんなに頑張っても!!……あいつは私を殺していくっ……」
嫌だよ。誰か……
ーガチャー
ービクッー
「……雨野……さ……」
なんでここに?
「夕凪君……」
なんで。どうしていつもこんなときにきてくれるの?
「……っ夕凪……君っ。……」
夕凪君は私をぎゅっと抱きしめた。
「うぅ……」
「…雨野さん。なにがあったかわからないけど、俺は絶対雨野さんの味方だ。どんなに世界中の人達が敵になっても。俺は絶対、雨野さんの味方だから!」
そうだ……夕凪君は、私の味方って……言ってくれてたんだ。
「雨野さんが望むなら、世界中の誰とも話をしない。雨野さんが望むなら、みんなに嫌われてもいい。だから……俺は信じて…」
いつもの関西弁じゃなく、弱々しい彼の声はまるで誰かにすがりつく私みたいだった。
「……うん。……ありがとう」
私は、夕凪君が味方になってくれているのなら、加藤諒太も怖くないよ。