君と、世界が変わる瞬間に。
「それじゃあ授業戻る?」
「そうだね」
「ごめん、榎本さん。雨野さん少し借りててええ?」
え?
「……うん。先生にはうまくごまかしとくね!」
すっかり仲直りしてしまった瑠璃と私。気まずさは全くなくて、瑠璃は帰り際に「進展するといいね」なんていつも通りの言葉を耳元で残していった。
「で、なにか話でも……?」
「うん、座って」
言われた通り座り込む。夕凪君は私の向かいに座って、私を見つめた。そんなに見つめられて恥ずかしい、って普通なら思うところだけど、今日はなんだか違う。
「ひとつ、雨野さんに謝らならんことがあんねん」
「……え…?」
「俺の名字。小学生の頃は、安藤やってん」
安藤……?
「安藤健人。みんなから、健って呼ばれとったんや。」
健……
「小学校のころは3回転校した。最後、小5の時に通ってた小学校の名前は″暁小学校″」
え……そこって…私と同じ……?
「中学校の転校したは2回。入学した時は、″妃ヶ丘中学校″……もう、わかるやろ?」
「なんで……私と同じ小学校と中学校」
「……俺は、雨野さんのことをここに転校したずっと前から知っていた。」
頭をガンッっと殴られたようだった。
「ずっと謝りたかった。…だからたまたまこの高校であえて、謝ろうとしたけど。できなかった。……雨野さんが、あまりにも紙のような笑顔をするから。…おもちゃのように、気の利いた言葉しか言わないから」
気づかれていたんだな。
「俺が雨野さんの支えになれたら。なんて思ってたけど、おこがましかった。……1番苦しい時、なにもせずただ見てることしかできなかった俺には…雨野さんに笑顔を向けてもらう資格すらない!」
「……」
「…謝って許してもらおうなんて思ってないけど、言わせて欲しい。ごめん!!!」
どう答えたらいい?…いろんな感情が混ざりあって、私には何も言えない。
「……少し、気持ちの整理をさせてほしい」
「必要ない!…俺を叩くなり罵るなりなんでもしてくれていい!!」
「…ごめん」
私はそれだけいって屋上をでた。