君と、世界が変わる瞬間に。
ーガチャー
「すみません遅れました!!」
「遅いわよ」
「すみません!!!」
「まぁいいわ。早く着替えて来なさい」
「はい」
私は放課後いつも学校から離れたカラオケ店でアルバイトをしている。
遅れたけど、2分くらいじゃん…。
なんて少し拗ねてみるけど、やっぱり自分が遅れてしまったという事実はあって、自分が悪いという自覚もあった。
「着替えました」
「じゃあ早く入って!」
「はい!」
ーコンコンー
ーガチャー
「お待たせいたしました、ポテトでございます」
ーパシャッー
冷たい……。
「ギャハハハ!!まじでこいつ罰ゲームやりやがったー!!!」
あぁ、そういうこと。…お客の男子高校生は何か賭けをしていて罰ゲームに入ってきた店員に水をかけるというものなんだろう。
私はポテトをテーブルにおいて、速やかにその部屋をでた。
「何してるの?!」
「すみません、ちょっと水をかけられて…」
「ほんとのろまよね!!」
「そんなんで私たちと同じ給料だなんて、ぼったくりだわ!!」
「だったらこれもかたづけておいて!」
ーバシャッー
「ふふふ、ありがとうね〜」
お客が飲みかけの紅茶を、私に思いっきりかけてからその人たちはその場からいなくなった。
きっともうわかるだろうが、私はここで孤立している。
先輩たちにひどい扱いを受けている。…辛くて苦しくて涙が出そうなのに、稼がないと…という思いが私の心を縛り付けた。
『さっさとしなさい!』
先輩の声を聞くとビクッと肩が揺れる。
『本当クズ』
先輩の声を聞くと吐きそうになる。
『さっさと働け!!』
あの頃を思い出して、今にも震える足が力をなくし崩れ落ちそうで…。
"たすけて"
その四文字も、私の中では存在しなくて。1人でただじっと耐えることしかわからなかった。