君と、世界が変わる瞬間に。
この頃から既に変わりだしていた
それからというもの、夕凪健人はしょっちゅう屋上に行っているようだ。
そのせいか、彼は今じゃ浮いた存在となっていた。
ーガチャー
「おっ、なんや。ここで会うのは久しぶりやなぁ」
「…夕凪君、授業にでなよ」
私は彼の言葉を無視して、自分の要件だけ伝える。
「……ほっといてくれてええで」
彼はこっちを見らずにそう答えた。
「…写真を撮りたいなら、休み時間でもいいんじゃないかな?…ここは学校だし、ちゃんと授業でないと卒業できないよ」
私は笑って答えた。すると彼は急に私のほうを向いて、カシャッ…とシャッターを押した。
「な、何…かな?」
「…なんでそんなに……っ」
「え…?」
「………なんでも…ない」
一瞬だけ見せた彼の顔は悲しみに溢れていた。
続きが聞きたくて、私は何か言葉を発しようと思ったけど…彼がシャッターを押す音を聞いてやめた。
苦しい、そう言っているようだった。彼がじゃない。彼の心が。私にそう言っているように聞こえたから。
「…ほらもう授業始まるで」
……しかたない、今はどんなに言っても聞かないだろうな。……そう思い、諦めて教室へ帰った。
「あ、雨野!」
「…古田先生…」
「最近どうだ?夕凪は。授業よくサボってるんだろう?」
「あ、はい…」
自分が悪い訳では無いのに、歯切れの悪い返事になったのは…きっと、面倒を見てくれと頼まれたのに上手くいってないから。
「もうすぐ球技大会だし、なんとか輪に入れるよう雨野も協力してやってくれ」
「…はい」
先生はそれだけ言うと去っていった。
正直、頼まれて嬉しくないわけじゃない。…だけど彼と私の世界は違う。だから私が彼を動かすことが出来るのか不安だった…。