君と、世界が変わる瞬間に。
「うん」
私はそう返事をしたあとに「ありがとう」と言った。
「さてとっ、帰ろっか!」
「そうだね」
外もだんだんと暗くなってきた頃、もう時刻は7時だった。幸い、今日はバイトに入っていなかったので安心する。
「空…きれい」
一瞬、自分の名を呼ばれたかと思ってびっくりしたが…そうじゃないらしい。
「……ほんとだ…」
夕焼けが落ちて、空が赤から青に変わるグラデーションになっている。…雲が紫やピンクになっていて、まるで綿菓子みたいだ。
そんな風景は、もう今日が終わるという実感を私たちに与える。
「今日もよく頑張ったね」と、言ってくれてるようで、この風景が好きだなって無意識に思った。
「……じゃあね。瑠璃っ」
瑠璃との別れ道にやって来て、私は笑顔で手を振った。すると瑠璃は手を振返さないで、私に向き直る。
「……瑠璃?」
「…あのね、空。…………何かあって…誰にも頼れない時、私に頼ってね…」
少し俯きかけていた瑠璃の顔がスッと私に向く。
「うん。これからはもっと、瑠璃に話を聞いてもらう」
それは心からの言葉だった。……夕凪君の時も、言われた「頼って」という単語。…けれど今ではあの時みたいな感情は湧かなくて、素直嬉しいと思った。
自分の嫌なところをみせて、それでもいいと言ってくれた。…瑠璃は裏切らないって言ってくれたから。
「ふふ、じゃあまた明日ね空!」
「うん、また明日」