君と、世界が変わる瞬間に。
そのまま瑠璃と話していたら1時間目の授業のチャイムがなってしまったので、慌てて席に座り、
空白の席を見つめた。
「えー、夕凪君は休みだな」
古田先生はそう言った。…いつもなら「またあいつはサボりかぁ?!」って感じで言ってるのに…休みって言うってことは、連絡があったってこと?
何の理由かな?…風邪ひいたとか?…家の事情でとか?…まさかとは思うけど、写真を取りたいから…なんてことは…っ。
…まぁそれはないか。
とにかく、授業が終わり次第、古田先生には確認しないといけないな。
ーキーンコーンカーンコーンー
「起立、気をつけ、礼」
クラスでの「ありがとうございました」という号令が響き終わったあと、速攻で私は教室を出る古田先生に話しかけた。
「夕凪?」
「はい」
「あぁ…あいつなら風邪だって」
風邪……。なんだか夕凪君が風邪をひいてるのってあんまり想像出来ない…。
「電話越しでも咳ひどかったしな〜。…鼻声でズビズビ言ってたし」
「え、そんなにですか?」
「ああ。…お!雨野、お前夕凪の見舞い行ってやる気はないか?!」
グイッと先生は私に顔を近づけた。…それをみた周りの生徒が「古田せんせーセクハラ〜(笑)」と言い、先生はすぐにヘラヘラ笑いながら顔を離した。
古田先生は教師歴は長いけど、実は36歳と結構若く、生徒達からの人気も厚い。顔も整った顔をしていて、狙ってる生徒もいるとか…。
でもまぁ、私みたいな性格の生徒からは普通におっさん的な感じで、年齢考えろよって思う。
「で、どうだ?!」
「えっと…」
「頼む雨野っ!…渡さないといけないもんもあってな!でもこの後会議で、おそくなってしまうんだよ!!な、頼む!こんなこと頼めるの雨野くらいなんだよ!!」
先生はきっと、私の性格をしって頼んでいるわけじゃないんだろうな。…世の中でいう、"天然"というやつだろう。
「わかりました!」
心の中でそんなこと思っていても、私がそれを拒めないことは、私自身がわかっていた。頼まれたら断れない。少しでも嫌われる要素を減らしたいという自分の汚い部分のせいだ。
「ありがとな!…あっ、これ夕凪の住所!!これ渡すものだ!よろしくなー!!」
…これ持ってたってことは、元から私に頼む気だったんじゃないのか?
そんな考えがあっていたとは知らずに、私は余計なことをしてしまったようだった。