君と、世界が変わる瞬間に。
「ここ…だよね…」
着いたその場所はアパートだった。…あまり綺麗とは言えないアパートだったけど、住所はここで間違いない。
階段を上がり、ドアの前で1度深呼吸をする。
ーピーンポーンー
呼び鈴を鳴らしたが、一向に出てくる気配がない。「いないのかな?」と思ったけれど、もう1度押してみることにした。
ードサッー
その直後に中から何か倒れる音がした。…一瞬泥棒の可能性がよぎったが、もしかしたら夕凪君がなにか倒したのかもと考えた。
けれど、ドアは開かない。
私はドアノブを持って引っ張ってみた。
ーガチャー
「え…開いてる…?」
「お邪魔します」と「勝手にすみません」が混ざりあって変な気持ちだが、それはすぐに消えた。
「夕凪君?!!」
玄関で倒れ込んでいる夕凪君をみたからだ。
「夕凪君、私がわかる?!!」
返事は無かった。…顔が赤くて、息苦しそうにしている。…そして服装からして、コンビニにでも行ったんだろう。
家の中に親がいないのはさっきの呼び鈴でわかったので、私は夕凪君に抱えてとりあえず1番近いドアを開けた。
「…え…?」
その瞬間、私はうっかり外にでてしまったのかなって勘違いしそうになった。…だって、彼の部屋は空の写真が壁に貼ってあって、まるで空に浮かんでいるようだったから。
そして、そのおかげでここが夕凪君の部屋だとすぐにわかった。
「夕凪君、なにか食べられる…?」
やっぱり返事はない。…けど辛いのは見ててわかった。…私は勝手に使って申し訳ないって思いながらキッチンに行き、炊飯器からご飯と、冷蔵庫から卵をとった。