君と、世界が変わる瞬間に。









「よしっ」



私は作ったおかゆを夕凪君の部屋に持っていく。

2度目なので変な感じはなかったけれど、よくよく見れば空の写真を貼っているのは一部で、部屋の壁一面ではなかった。

それなのに、さっきの感覚はなんだったんだろうとすこし不思議に感じた。


「…ん……」


「あ、夕凪君…大丈夫?」


「…ぅ…ん…」


なんとなく虚ろな目をした夕凪君。


「おかゆ作ったんだけど、よかったら食べてね。ここに水とクスリと、あとプリンも置いてるから」


彼を残して帰るのは少し気が引けるけど、私がいたら休まるもんも休まらないだろう。そう思って急いでカバンを肩にかけ部屋を出ようとした。


「…空……っ」


ドキッとした。…彼は目を開けたままそう呟いた。それは私の名前なのか、それとも外で広がっている空なのか、私にはわからなかった。


「…あれ……雨野…さん?」


「…へ、あっ…夕凪君」


「なんで、ここに…いるんだ…?」


あれ、関西弁じゃないな?


「えっと、お見舞いと、先生に頼まれたものを…」


「…それは…?」


「おかゆ。ごめんね勝手にキッチン使っちゃった。お母さんとかに何か言われたらすみませんって言ってて…っ!」


「…親…いないから…大丈夫……」


「…え……?」


夕凪君はまた目を目をつむって寝たみたいだ。

でも、親いないって…亡くなってたってこと…なのかな?…だとしたら、悪いこと聞いてしまったな…。


ーガチャー


「…へっ?!」


突如玄関のドアが開く音がした。…親いないって言ってたから…今度こそ泥棒?!なんて思ったけど…


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