君と、世界が変わる瞬間に。
ーガチャー
「あれ?!…お客さん?!」
「あ、はい…おじゃましてます?」
「あはは。俺そいつの兄貴だから、警戒しなくていいよ〜」
ああ!お兄さんだったのか!!
「健人のお見舞い来てくれたんだな」
「頼まれたもので…」
「ねぇ名前は?!」
「えっと…雨野空…です」
「あぁ、君が…ねぇ。」
その言葉の意味がわからず、私は聞き返そうとしたけれど、お兄さんに遮られてしまった。
「空ちゃん」
「はい…?」
お兄さんは私に来い来いと手招きして、私を夕凪君(弟)の部屋から連れ出した。…なんだろう、そう思って、すぐに緊張がはしる。
だって、男の人とほとんどふたりっきり状態。しかも年上のだ。…私は本当に男子しかもこんな大人びた人と話すなんてすごく緊張する。
「よかったらリビングで休憩して行かない?…アイスでも食べながらさっ」
「えっと…すみません…私は……」
学校じゃ委員長として、堂々とできているはずなのに、やっぱり私は変われていない。
「あ、ごめんね。怖がらないで。ちょっと、学校での健人のこと聞きたいだけだから。変なことしないし、同じ家に健人もいるし、ね!」
「…はい」
頷く他なかった。
「ほらほら、座って〜」
けど、私はなにかされるなんて思ってないし、悪い人だとも思っていない。…むしろ、夕凪君(弟)のお兄さんだけあって、少し居心地がいい気もする。
「…はい、アイス」
「ありがとうございます…」
私は受け取ったアイスの蓋を開けて、1口食べる。それを見てから、お兄さんは話を始めた。
「空ちゃんからみた健人ってどんなやつ?」
急な質問に思わずアイスを落としそうになる。
「…え、えっと…大の空好き…ですかね?」
「ははっ!確かに!!…大好きなんだろうなぁ」
私を見てそういったお兄さんは、少しほっこりした顔をしていた。
「いつも写真ばっかり撮ってますし」
「…ああ、写真家目指してるって言ってたしっ。でも空を撮る理由…それだけじゃ無いと思うんだよね…」
空を撮る理由?…ボソッと呟いたお兄さんの言葉はまたまた意味がわからなかった。聞きたかったけれど、お兄さんはまるで今の言葉は無かったことにしたかのように話を再開した。
「健人って、本当バカだからさ、見ててやってくれ」
お兄さんは弟思いなんだなぁと、思った瞬間だった。
「あの…っ」
私はふと思ったことを、言わずにいられなかった。
「…夕凪君…あ、健人君の方ですけど…お兄さんは標準語で話すのに、彼は関西弁なんですね」
「あぁ、あれは…」
ーピーンポーンー
「…ごめん空ちゃん。ちょっと待っててね」