君と、世界が変わる瞬間に。
黒く濁った空は、桃色へ
「行こう」
「…え…?…わっ!」
ーフワッー
こ、こ、これって…世間で言う…おおおおお姫様抱っこ?!!
「夕凪君っ…は、恥ずかしい…」
「でも、雨野さん立てへんやろ?」
腰抜けてるの、バレてたんだ…っ。
「荷物は?」
「休憩室に…」
夕凪君は店員用のドアを開けて、休憩室に向かった。…花本先輩たちは更衣室でおしゃべりしていたから多分見つかることは無いし、大丈夫だろう。
ーガチャー
「お、おつかれさまでしたー……」
店を出る時ひっそりと、そう言った。そしたら夕凪君が苦笑する。
「律儀やなぁ〜」
「…なんか、負けなくなかったの。……それよりも!…もう大丈夫だから下ろしてっ…」
このまま道を歩くのは恥ずかしすぎる。…想像しただけでも顔から火が出そう。
「…わかった」
夕凪君は、ゆっくり足から降ろしてくれる。そして、着ていた半袖パーカーを私の肩からフサァっとかけてくれた。
「…カラオケの着てるから」
「あ…そうだった。…ありがとう」
パーカーからする夕凪君の微かな匂い。凄くほっとしてドキドキする。
「そこのファミレス行こか」
「うん」