なないろ
***

う……ヤバイ。

頭の奥に鈍い痛みを感じる。時々起こる偏頭痛だ。

よりによって1番苦手で頭を使う数学の時間だ、ついてない。痛み止め、あったかなぁ。

「えー、x y=……」

今日もダルそうな先生の声は痛む頭の中を通過していくだけだ。

「はい、じゃ今日はここまで」

授業が終わる頃には痛みは増し、とても次の授業を受けられそうもなかった。

仕方ない、休もう。

「木下さん」
「ん?」

斜め前に座ってクラスメイトと話す木下さんに声を掛ける。

「ちょっと頭痛がするから、保健室で休んでくる。先生に言っておいてもらっていい?」

「え?大丈夫?私保健室まで付き合うよ」

「いいよ、大丈夫だから」

遠慮する私に半ば強引に付いて来る木下さん。案外面倒見がいいのかもしれない。

「もしかして偏頭痛?」

「ああ、うん。気圧が下がってるのかもしれない」

外を見ると低い雲がかかっている。雨が降るかもしれないな。もうすぐ梅雨入りしそうだと、今朝のテレビで言っていたのを思い出す。

「ウチのママと一緒だ。ママも今頃痛がってるかもしれないな……」

ゆっくりと隣を歩いてくれる彼女は、私よりも頭一つ分背が高く、頼もしく見える。

こんな風に彼女と2人になるのは初めてだな。

私を気遣ってくれる少し低い声が私を安心させる。

トントンと保健室のドアをノックし、ガラリと開けると独特の消毒液の匂いが鼻をつく。
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