私の本音は、あなたの為に。
私は、何事も無かったかのように手元の小説に目を落とした。



会話が途切れ、静かになる図書室。


図書室には、私のページをめくる音と五十嵐のスマートフォンのタップ音、そして


「うわっ、またかよ…」


という、悔しさの滲む声しか響かない。


(五十嵐、諦めないな…)


私は本を読みながら、心の中でそう呟く。


(だから、私に貸してくれれば良かったのに…)


だからと言って、私がクリア出来る自信も無いけれど。


そう思いながら本を読んでいると、急に


「ねえ、安藤?」


と、五十嵐が私に話し掛けてきた。


「ん?」


私は、本のページをめくりながらそう言う。


「あのさ、安藤って…」


その途端、またもや五十嵐の手の中のスマートフォンから、不協和音が鳴り響いた。


「次こそクリアしてやるっ…!」


1人で意気込んだ五十嵐は、強制的に話題を戻した。


「…だから、安藤ってさ、何か男っぽいよね」



「……!?」


(何、急に何!?そんな事言うなんて、どうしたの五十嵐!?)


そんな私にまるっきり気付かない五十嵐は、スマートフォンをタップし続けながら言葉を続ける。


「安藤って、髪が短いじゃん?しかも、何て言うか、性格も男っぽい気がするし。…色々な面で、男っぽいよね」


(えっ……)
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