私の本音は、あなたの為に。

私の静かだった心の中に、たちまち嵐が吹き荒れる。


学校では、花恋以外の人に絶対にばれないようにしてきたのに。


男っぽい髪型の事を言われるのだって、昔は今よりも笑顔で対応が出来たのに。


家でママに同じ事を言われても、笑顔で対応が出来るはずなのに。


それなのに、今の私の顔は石像の様に固まってしまっているだろう。


｢そんな訳、無いよ？｣


(学校では、女で居させて)


普段通りの口調を心がけて、私はそう言う。


｢えっ、そうかな？｣


五十嵐が首を傾げたその瞬間、五十嵐のスマートフォンから、今までとは違う綺麗な和音の音が聞こえてきた。


｢やった、クリアだ！｣


思わずガッツポーズをした五十嵐は、慌てて逸れた話を元に戻した。


｢でも、さっきの俺のスマホのやり取りだって、何となく男っぽかったって言うか…｣


そうやって言われると自信なくなるんだけどさ、と彼は苦笑いを浮かべながら言葉を続ける。


｢とにかく、さっきの安藤は男っぽかった。…褒めてるんだよ？｣


五十嵐は、私の様子がおかしい事にも気が付かず、新しく次のステージの音楽を流しながら話し続ける。


｢何か、雰囲気が男っていうのかな…。俺と同じ感じでさ、凄く俺らに溶け込んでる感じ｣


(そんな事ない、違う)