私の本音は、あなたの為に。
「安藤、これ褒めてるんだよ?勘違いしないでね」


(私は女なの。家の中でだけ、男なの)


私は、必死で自分に言い聞かせる。


(五十嵐の言っている事は全部嘘。私は女、だから大丈夫、ばれていない)


それでも、恐怖の方が上で。


(五十嵐、もう言わないで、私を苦しめないで)


思う事は、そればかり。


学校では、元々の女子で居たいのに。


家の中で性別が変わり、学校でも居場所が無くなったら、私はどうすればいいのだろうか。


「だから、やっぱり安藤って…」


また、私の脳に擦りつける様に五十嵐が口を開いた。


(やめて、やめて、もう言わないで!)


心の中では、私は叫んでいるのに。


泣き叫んで、今すぐ逃げ出したいのに。


現実の私はただ手が震えていて、それを必死に隠しているだけ。


だから。


何も気付かない五十嵐は、究極の一言を発した。


「男っぽいよ」



「やめて…」


私の手から、読んでいた小説が滑り落ちる。


「やめて、五十嵐」


「え?何が?」


まだゲームを続けている五十嵐は、こちらを全く見ようとしない。


「別に、俺は安藤の事を傷つけた訳じゃないよ。俺はただ、安藤が男っぽいって…」


「やめて、言わないで!」
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