私の本音は、あなたの為に。
私-安藤 優希-は、走って階段まで来ていた。


(どうしよう、どうしよう…!)


今は、図書室には戻りたくない。


五十嵐とも、顔を合わせたくない。


(どっちに行けばいい?)


軽く乱れた息を整えながら、私は階段の踊り場に立ち尽くす。


もしも、階段を降りると。


(家……)


家が、近付くことになる。


今はまだ、家には戻りたくない!


(上に行こう!)


五十嵐から、家から逃げる為。


私は、1段飛ばしで階段を駆け上がった。



3階に辿り着いた私は、廊下を覗く。


そこには、今まさに帰ろうとしている花恋の姿があった。


音楽室の扉を閉め、こちらに向かって歩いてくる。


(花恋っ!)


(助かった!)


そう思ったのもつかの間。


後ろからは、


「安藤っ?何処!?」


と、焦った様な五十嵐の声が聞こえてきて。


(嫌っ!)


数分前の出来事を思い出して目頭が熱くなりながら、私はまたもや廊下を走りだした。


走って花恋に近付いていくと、ようやくあちらも私の事が分かったようで。


「あれー?優希じゃん、図書委員は?」


何も知らない彼女は、音楽室の鍵を振り回しながら私を見ている。
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